soramido 空と緑の暮らし店

オーナー安井の山梨ぐらし

“山梨にいる自分”だからこそできることを考え続けたい

2021年4月、ソラミドは5周年を迎えました。ソラミドは、オーナーの安井が山梨との二拠点生活をスタートしたころ、「自然とともに生きることの喜びを伝えたい」という思いから始めたメディア&ショップです。今回は、安井が送ってきた5年間の里山暮らしを振り返る記事をお送りします。自然のそばでのびのびと生きることの一例として、何かヒントを届けることができれば幸いです。ぜひご覧ください。

こんにちは。「空と緑のくらし店」オーナーの安井です。
2016年の3月に山梨県との二拠点生活をスタートし、5年が経過しました。
ソラミドも、山梨での生活を始めたころ、里山にあるくらしの良さをみなさんに知ってもらいたい、という想いで立ち上げました。

私の里山暮らしもソラミドも、2021年の春に5周年を迎えることができました。

そこで今回は、私が里山でのくらしをはじめてから5年間で変化したこと、得られたもの、これからのことについてお伝えできればと思います。

双子の子育てを、自然豊かな場所で

もともと、「いつか自然が豊かなところで暮らせたらいいね」とは妻とも話していて、週末ごとにさまざまな地域を訪れて下見のようなこともしていました。ちょっとした小旅行も兼ねて。でも、当時は漠然と「老後に田舎暮らしができたら……」くらいのイメージを持っているだけでした。

しかし、その後子どもが生まれたことをきっかけに、移住の話が一気に現実のものとなったのです。

ひとつ大きく背中を押すことになったのは、子どもが双子だったこと。親として最大限子育てに気を張らなければならない期間が二人分同時に訪れる、というのが、家族の暮らしを見直すきっかけになりました。保育園に入れなかったというのも契機になりましたね。

私自身は、幼少期に兵庫県の自然の中を走り回って育ちました。当時は無意識でしたが、四季を身近に感じたり、きれいな石や花を見つけたりする小さな体験の積み重ねは、人格形成や教養といった面にプラスの意味があったのではないかと感じています。

このまま都市で双子の子育てをしていくとなれば、親として子どもの行動を制限しなければならない機会も増えていくのでは、といった心配もありました。

そんなことをあれこれ考えるうちに、子どもたちにもできれば自然豊かな場所で、のびのびと育ってほしいという思いが強くなっていったのです。そして2015年の1月(子どもたちが1歳のころ)に「今が移住のタイミングなのかもしれない」と思い立ちました。

妻に話を持ちかけてみると、「いいね」と、すんなり。3分後には移住することが決まっていました。妻も、子育てや自身の働き方について悩み、糸口を探していたからこそ、すぐに賛成してくれたのだと思います。

移住することを決めてからは、実にスピーディーに事が進みました。

すぐに土地を見に行って、2週間ほどで土地を購入。翌月には工務店と打ち合わせをして、2015年7月には地鎮祭。そして、2016年の3月に山梨・小淵沢での暮らしがスタートしました。

自由に遊べる環境で
できること、好きなことを見つける

家が完成後は、妻と子どもたちは山梨で暮らし、私は仕事のために平日は川崎のマンションで寝泊まりし週末に山梨へ帰って家族との時間を過ごすという生活を送っています。

山梨の小淵沢という土地を選んだ決め手は、都心との行き来がしやすいことと、山が近くにあること。もともと、夫婦ともに海か山かといわれれば山派。南アルプスの山々を臨める景観や、緑豊かな環境がしっくりきてこの土地に家を建てることになりました。

比較的移住者の多い地域のため、受け入れてくれる土壌のようなものもあり、周囲の人たちともわりとすぐに打ち解けることができました。地域の住民同士で互いに見守り合うような空気にも、安心感を覚えることができています。

子どもたちは、1〜2歳まではすごく人見知りをして、初めての人に会うと固まってしまったり、親の後ろに隠れてしまうような子でした。山梨で暮らすようになってからは、自由気ままに行動できる場所や時間が増えたことで、引っ込み思案なところはだいぶ改善されたと感じています。

思い通りにのびのびと遊べるようになったことで、自分ができること、好きなことを見つけ、自信がついてきたのでしょう。それは都会にいてもできたことなのかもしれませんが、少なくとも我が家の子どもたちにとっては、都会でもみくちゃにされて育つよりも、自然の傍でのびのびと過ごすことが合っていたんじゃないかと思うんです。

ちなみに娘は手づくりが好きで、おもちゃが欲しくなると「買って」ではなく「紙と色鉛筆貸して」というスタンス。「なければつくる」が当たり前になってきているようです。息子は読書が大好きで、時間があればとにかく本を読んでいます。新聞を読むのも日課です。

余計なものがない環境だからこそ、手を動かしたり、本を読んだりすることに集中できるというのもあるかもしれませんね。

暮らすために、手と頭を使う

里山暮らしを始めてからは、“生活するため”に時間を使うことが多くなったように思います。

芝刈りをしたり、薪割りをしたり、畑仕事をしたり。垣根を整えたり、子どもたちとおやつを作ったり。

都市部で暮らしていると、何かが足りなければすぐに買いけますし、空調もスイッチひとつで整います。設備を自分で直したりすることも、ほぼありませんよね。もし私があのまま家族でマンション暮らしをしていたら、書斎にこもって仕事ばかりしてしまっていたかもしれません。

生活するためにやらなければならないことは、間違いなく田舎のほうがあると実感しています。「やらなければいけない」と言うとちょっとマイナスに聞こえるかもしれませが、それは「チャレンジできること」「工夫できること」でもあると思うのです。家族で力をあわせて生きている感覚というのも、強く持てるようになりました。

便利な都会暮らしにも、もちろん魅力はあります。ですが、私たち家族の場合は、子どもが大きく成長する時期にこのような環境で、手間をかけて生活することは意味のあることだと感じています。

山梨で生きる意味を考え続ける

これからの暮らし方についても、答えはまだまだ出そうにありません。

実現できるかは別として、ワインを作ってみたいな、という夢は持っていたりするのですが。

私は自分の存在価値は何かということを常に考えてしまうタイプなので、せっかくなら自分たちが「山梨で生きる」意味を持っていたいと思うのです。今は子どもたちを中心に生活がまわっていますが、いずれ娘と息子が巣立つときが来れば、妻と二人で山梨で暮らすことにも意味を見出したいと考えています。

もしかすると、今やっているWebやメディアをつくる仕事を山梨ですればいいのかもしれない、と考えることもあります。世の中としても、コロナ禍を経てそういった働き方はやりやすくなってきました。

でも、今の仕事を、自分がそのまま山梨へ持っていくことにどんな意味があるのか? と、いつも考えてしまい、結局まだ答えが出ないのです。

暮らしのために工夫する日々も、答えのない問いに挑み続けることです。

野菜が思うように育たなかったり、手をかけて作ったものが朽ちていったり。

ひとつを解消すると、また新しく答えのない何かがやってきます。この5年間で慣れたこと、できるようになったことがたくさんありますが、新たに挑戦すべきこと、考える必要のあることも次々と湧き出てくるのです。

でも、それはそれで楽しいと感じています。自然のなかで答えが見えない作業をすることは、人間のくらしの原点でもありますから。

自分たちが、山梨という地域だからこそできること。山梨にいるからこそ発揮できる存在価値とは何か。

今後も、答えのない問いに挑み続けることを楽しみたいと思います。


安井 省人(やすい・まさと)
空と緑のくらし店 店長/株式会社スカイベイビーズ クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。