
リネンの革命家!
全ての経験を糧に。自社ブランド「wafu」を確立。
山梨県中央市で生まれ育った綿貫陽介さんはリネン素材にこだわるアパレル「wafu」の代表取締役。
JR身延線・小井川駅から歩いて10分もしない住宅地の中にwafuがありました。


元々は学校の先生だったおじいさまが、服がなかった戦後に残っていた暖簾などの生地を使って服にリメイクしたのが現在のwafuのはじまり。
そのあとご両親が継いで、綿貫さんは三代目となります。
この地で「縫製」という仕事を続ける原動力
アパレル業界の過渡期でもあった90年代に稼業の縫製工場を継ぐことに。
そのころはほとんどのアパレル会社が縫製を海外に移行している真っ只中でした。
取引会社から「早く仕上げてほしい」「もっと安くしてほしい」という使い捨てのような言葉を投げかけられる日々に少しずつ疑問を持ち、それが「怒り」となっていった綿貫さん。
稼業を継いだ当初は営業をされていましたが、洋服を作る上でコストを削ろうとした時、どうしても縫製工賃にしわ寄せがくることを知ります。
仕事はハードなのに賃金は安い。生活するのがやっとな状況。縫製職人のなり手が減っていくのも時間の問題でした。
その状況を目の当たりにし、「自社でデザイン・縫製・販売をすべてまかなうこと」にシフトチェンジしようと大きく舵を切ります。ここから綿貫さんの挑戦が始まったのです。
すべての経験を糧にwafuが誕生
縫製の請負を辞めてからは、収入は減る一方。ある年の暮れは収入が10万円を切ったと言います。
「さすがにこれはヤバイと思いましたね」と、綿貫さん。
それでも綿貫さんは、自社ブランドの確立をあきらめませんでした。
「死ぬわけじゃない」と自分を奮い立たせて続けられたのは、使い捨てられたくないという当初から持ち続けた「怒り」の原動力のおかげだと言います。

また、その時のwafuを支えたのは、外でもない先代の時代に培った確かな縫製技術でした。
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規格がだいたい決まっている紳士服の縫製が海外生産に流れる中、wafuの前身では日本の代表的なデザイナー 森英恵さんなどのDCブランドの縫製を手掛けるようになり、レディースものに強くなっていきました。当時は効率化のためにシャツやジャケットを専門に扱う工場が目立ちましたが、先代はどんなアイテムも自社工場で対応してきました。
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結局、それから十数年かけて、今の自社ブランドだけの形を確立。縫製を請け負っていた以前に比べると格段に利幅が増え、人を雇い、新しいことに挑戦できるようになりました。
「今がとても楽しいです」と綿貫さん。
お客様への想いとこれからのwafuの挑戦
「やりたいことや挑戦したいことはまだまだたくさんあります」
綿貫さんのお店に伺った日は、ちょうどショールームのレイアウト変更を行っていました。
現在の販路はほぼオンラインですが、wafuの海外進出も視野に入れているとのこと。
また最近はもの作りをされている他の方と共同で展示販売を行ったりしています。「今後は個展なども自社で企画していきたい」と、展望を楽しそうに話してくださいました。

併設されているカフェ店内で奥様とスタッフの方と談笑中

この日はお休みにも関わらず、温かくておいしい「おろしうどん」をいただきました。
またこんなお話も。
「インターネットの高速化が進み、お金をかけなくても楽しめることが世の中にはたくさん増えました。どこで楽しむか、どこでお金を生むかという形態はこれからもどんどん変わり、仕事をする形も変わっていくでしょう。でも、お客さんが商品に触れる場の提供は絶対に必要だと思っています。」
実際、オンラインで商品を見てから、手に取って見てみたいと遠方から来てくださることも少なくないんだとか。そんなお客さまのために、wafuは敷地内にカフェや宿舎(!?)まで作ってしまったのです。


なんと宿泊料は無料。入口の暖簾やタオル、寝具でリネン素材を味わえるひと時。
事前に予約は必要です。こちらをご覧ください。「wafuのお宿 オープン」
どれも、わざわざ足を運んで来てくださるお客様の満足度を絶対下げてはいけないという、綿貫さんの強い想いからです。
リネン(麻)素材に魅せられて
wafuでは、なぜリネン素材だけを扱うのでしょうか?

カフェ店内で小物や生地を販売しています。
綿貫さんはもともと野球少年で、ジャージなどに使われている撥水性や通気性の良いものが大好きで「ポリエステル星人」だったと笑って話します。それが、あるきっかけでリネンのシャツを着たときに【これは最高だな】と思えたそう。
そう感じてしまったのだから、もうそれしか考えられない。リネンでやるしかない!(笑)

wafuで使用するリネン素材は海外から仕入れていますが、wafuブランドとして織り方からオーダーすることもあるそうです。
そのリネンを国内で染めあげて、wafuでデザイン・裁断・縫製をして、仕上げていきます。
最後に
取材の数日前にwafuのお宿に宿泊されたお客様と話が盛り上がり、なんと洋服づくりの経験がないのにも関わらず、ご夫婦で山梨へ移住してこられwafuで働くことが決まったそうです。
「これも何かのご縁でしょう」と、軽やかに笑う綿貫さんが印象的でした。
実は、今回綿貫さんに取材させていただいた経緯も、ソラミド編集部が偶然Twitterで拝見した綿貫さんのツイートがきっかけでした。里山でリネンにこだわって洋服作りを続けている熱いツイートを拝見し、取材を申し込んだ私としては、そのご夫婦の気持ちが少しわかるような気がします。
<リネン革命家 わたぬき陽介 Twitter>https://twitter.com/watanukifukusou