空と緑のくらし店(ソラミド)

大分県杵築市

国東半島の伝統工芸「七島藺」の魅力の伝い手に

理想の暮らしを実現しながら、杵築市を盛り上げる力になりたい

大分県の北東部に位置する杵築市(きつきし)。城下町として栄え「九州の小京都」とも呼ばれ、観光地としても人気です。海や緑など自然も多く、風情ある街並みが魅力的。今回は、2019年から地域おこし協力隊として杵築市で暮らす、青木奈々絵さんにお話を伺いました。

自分らしい生き方を探して

もともとは栃木県ご出身の青木さん。
就職してしばらく新潟での暮らしを経験後、東京の国際協力団体へと転職されました。
そのまま東京で5年ほど過ごされたそうですが、豊かな自然の中で生まれ育った青木さんにとっては東京での生活がどうしてもせわしないものに感じられてしまったそう。

そこで思い切って仕事をやめて、これからの自分の生き方を考えることになったのが、2018年春のことでした。

「自分たちのものは、自分たちで」

お付き合いをされているパートナーの方が当時バイクで日本一周をされていて、青木さんは以前から飛行機や電車で各地へ赴き、現地で合流をして旅をすることがあったのだとか。その流れで、お仕事をやめてすぐのタイミングで訪れたのが、大分県でした。

滞在したのは、杵築市内の農家民泊。滞在先のご家族は、お米や野菜などの食糧をはじめ、身につけるものや住まいまで、身のまわりのものをできる限り自分たちで作り、暮らしに愛着を持って生活している方たちでした。

青木さんはその暮らしを目の前にして「ピンときた」のだとか。

「美しくもたくましく暮らす人と空間を目の当たりにして、自分もこんなふうに生きていきたい、と思うようになりました」(青木さん)

地域おこし協力隊として移住することに

大学時代、観光科に所属していた青木さんは、グリーンツーリズムや地域の観光資源について学んだ経験を持ち、地域おこし協力隊にも興味を持っていたのだとか。
そこで、杵築市滞在中に地域おこし協力隊の方を紹介してもらうことに。その方が空き家バンクの担当だったこともあり、自然と杵築市内の家を見せてもらうようになったそうです。そうした中で、杵築市で暮らしていくイメージが少しずつ現実的になっていきました。

その後一度東京に戻りますが、「やっぱり地方で暮らしていきたい」という思いが確信に変わりました。それから秋冬にかけて何度か大分に足を運び、杵築市で暮らしていくための準備を進めたそうです。

ちょうどそのとき杵築市の地域おこし協力隊の募集があり、無事に採用されたことで、お仕事と住む場所は比較的スムーズに決まったのだとか。
また、何度か訪れたことで人との関係性も築けていたので、頼れる人がいるという安心感にも背中を押されました。

実際に杵築市での暮らしが始まったのは、2019年の1月。

古い家を直して暮らすために、パートナーの方は家づくりや内装にまつわる技術を習得し、2019年の7月に杵築市へ。現在は杵築市で一緒に暮らしています。

周りとの距離感が心地よい

地域おこし協力隊としては、移住デスク担当として主に空き家バンクの担当をされています。家を案内したり、マッチングさせたり。ほかにも、移住された方に取材してインタビュー記事を書いたり、首都圏の移住イベントに相談員として参加されることもあるそうです。

地域のお祭りの実行委員を務めるなど、イベント行事にも気軽に呼ばれる日々だそうで、「良い意味で壁がない」ことに、青木さんは心地よさを感じているといいます。

「普通なら、地域との距離を縮めることにもっと時間がかかるかもしれませんが、地域おこし協力隊として移住してきたことで、初めて会う方にも『ななえちゃんだよね』と親しみを持って接してもらえています。小さいまちなので本当にそれぞれの距離感が近く、わたしにとってはその距離感が心地良いんです」(青木さん)

地域おこし協力隊の任期は3年。現在はちょうど2年目に入りました。

青木さんは、「1年目はまず私のことを知ってもらって、周りとの関係性を築く期間だったのかなあと。2年目からは、もっと町や人に還元できることをしていきたいです」と話します。

伝統工芸の伝え手として

もうひとつ、青木さんにとって大分での暮らしの軸となりつつあるのが、国東半島に伝わる伝統工芸「七島藺(しちとうい)」です。

七島藺とは“い草”の仲間で、現在は大分・国東半島のみで栽培される畳表の原材料。青木さんは、もともとわら細工に興味があり、東京にいる頃から稲わらを使って製作したものを展示・販売をしたりしていたそう。
大分に来てからもわら細工を続けられたらいいな、と考えていたところ、この地域にしかない七島藺というものがあると知り、移住してすぐに教室に通うようになりました。

今では「杵築七島藺マイスター」という、現在十数名しか持っていない称号も持っているそう。この称号があることによって、ご自身で制作した七島藺工芸の作品を販売したり、ワークショップを開くこともできるようになったそうです。

青木さんが制作された作品たち

七島藺の魅力は、手触りの良さと昔懐かしい香り、そして国東半島でしか手に入らないという希少さだと青木さんは話します。
現在は七島藺を生産する農家さんも7人しかいないとのこと。七島藺は田んぼで栽培されますが、お米と違って機械が使えず、ほとんどが手作業になるため、育てるのがとても大変なのだとか。

そのため生産農家も減少していき、今では貴重な素材になってきているそう。青木さんご自身も、農家さんのもとで田植えや収穫を手伝っているそうです。

「地域おこし協力隊としてほかの地域の方と関わることも多いので、県内でも知らない人の多い七島藺という素材の魅力を、より多くの人に伝えていきたいと思っています」(青木さん)

理想の暮らしを実現していくために

現在は市内の賃貸マンションで暮らしている青木さんですが、より自然に近い暮らしへの思いは今も持ち続けています。

ちょうど2019年末に、今後暮らしていくお家が決まったそう。
そこは築150年の古民家で、お庭も畑もあり、今よりもう少し自然に近い暮らしができるようになる予定です。

青木さんが暮らしていく古民家

2020年は、じっくりと自分たちの手でお家を直していくそう。

「自分の住む空間を、愛着をもって整えていく。私たちがこの場所にきて惹かれたそれを、今度は自分たちの力でつくっていけたらと思っています。環境が整ったら、都会に住む子どもたちが、少し不便な、それでいて自然に寄り添ったここでの暮らしを体感できるよう、グリーンツーリズムへの取り組みもしていきたいと考えています」(青木さん)

これからさらに協力隊として責任を持ってお仕事をされながら、ご自身の理想の暮らしを実現するために動き出していくことになる2020年。

青木さんの新しい暮らしが、どのように形作られていくのか楽しみです。

青木奈々絵さんのInstagram
https://www.instagram.com/nanae_nana/