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千葉県・長生郡

古民家を自力で改修しながらの三人暮らし

千葉県長柄町で、築160年の茅葺き屋根の古民家をみずから改修して暮らしている奥野さんご一家。夫の瑠一さんと妻の瞳さんは、東京の服飾専門学校時代に出会いました。

ご結婚前は東京で暮らしていましたが、それぞれ出身地が茨城県と長野県で、幼少期はのびのびと過ごしてきたこともあり、「結婚したら田舎の広い一軒家に住みたい」と話してきたそうです。

そこで、5〜6年前ごろから古民家の物件を探し始め、長柄町の現在のお家に住むことが決まりました。

瑠一さんは千葉県船橋市でソーシャルワーカーのお仕事をされているため、1時間ほどで通える範囲のなかから、自然が豊かな地域を探していたそうです。

子育てをしながら、仕事ができるように

里山暮らしに向けて、お仕事の面でも準備を重ねてきたといいます。子どもが生まれたときに、子育てをしながら暮らせるようにと、テキスタイルディーラーのお仕事を始めたのです。

日本の古布を仕入れて直したり、ときには服や鞄にしてから、海外に向けて販売されていて、現在は主に瞳さんがご自宅で縫製や撮影、サイトの編集などのお仕事を行っています。

瑠一さんは学生時代から個人で輸入・輸出を行うECサイトを運営されてきたそうで、そのノウハウも活かしながら物件探しと同時期から準備を進めてきました。

「物は使われてこそだと思っているので、日本人が着なくなったり、使わなくなったりしたものが、形を変えて使ってくれる人のもとへ届いたらいいな、と。もともと僕自身、古着が好きだったり、母がテキスタイルの仕事をしていたのもあって、古布を扱うことにしました」(瑠一さん)

 

 

豊かな自然の中で、感覚が研ぎ澄まされる

古民家を自ら補修しながら暮らすという道を選んだのは、「昔から、そういう暮らし方をしてみたかった」からだといいます。

ご両親も古いお家が好きだったことや、瑠一さんご自身が子どものころからものづくりが好きだったのも理由です。

購入当初は建物が傾いていたため、一度骨組みだけにして、ゆがみを直してから床も壁も貼り変えたのだとか。購入からおよそ3年が経ちましたが、今も補修は続いているそうです。

「1歳の娘が小学校を卒業するころまでには、全部直し終えておきたいなとは思っています。でも、次から次へと直したいところやこだわりたいところが出てくるので、なかなか終わりは見えません」(瑠一さん)

こちらで暮らすようになってから、「四季をすごく感じられるようになった」と、ご夫婦は言います。

夏の蒸し暑さが、カラッとした秋の空気へと変わる様など、肌で季節を感じられることが増えたそうです。

「虫や動物が出て少し大変なこともあるけれど、自分たちにはこちらのほうが合っているなって。朝になると鳥と虫が鳴きはじめて、夜になると日が沈んで『もう寝よう』と自然に思えるような。こちらに来て、感覚が研ぎ澄まされたような気がします」(瑠一さん)

1時間ほどで都心に出られるという距離感も程よいそうで、「月に2,3回都会に遊びにいくくらいが私達にはちょうど良いみたいです」と、瞳さん。

暮らしも、お仕事も、子育ても、ベストな方法を常に探り、行動に移してきたお二人。お家の補修に「きりがない」とおっしゃっていたように、きっとまだまだこれからも新しい道を拓きながら、家族にとって心地よい選択肢を見つけていかれるはずです。

 

 

家も、物も、古くからのものを大切に

お二人に、「これだけ手を掛けているお家なので、今後は永住されるご予定ですか?」と聞いてみると、「子育てが落ち着いたら、ここは民泊みたいに貸せたらいいなとも思っているんです」とのこと。

以前、瑠一さんはお仕事でデンマークを訪れた際、古いお家を直して大切に住む文化や、若い世代でもどんどん古い物件を購入して、住まなくなったときは誰かに貸し出すなど、良い意味で不動産を気軽に扱う風潮にとても感動されたのだとか。

その影響もあって、将来は、敷地内の納屋をご家族の住居として使って、今暮らしているお家は宿にできたらとイメージされているそうです。

家も、物も、古いものを直しながら大切に使い続ける。奥野さんご一家のご自宅が、今後さらにどのように姿を変え、魅力を増していくのか楽しみです。

 

インタビュー:2019年8月