
狭山茶の「宮野園」でお茶の魅力を再発見(お抹茶編)
2018年5月、埼玉県狭山市にある宮野園さんでお茶摘み&お抹茶体験をしてきました。
後編ではお抹茶体験の模様をお伝えします。
前編はこちら
淹れ方による味の変化を楽しむ
お抹茶体験は、自分の手で粉にしたお抹茶を味わえるというもの。その前に、まずは高級茶である狭山玉露を淹れていただきました。

玉露とは、収穫前の一定期間に日光を遮って栽培したお茶のこと。日光を遮ることで 渋み成分が生成されるのを抑えられ、旨み成分がたくさんお茶の葉に残ります。
まずは少量のお水で淹れたものをいただきます。

味わってみると、想像していたお茶の味と違ってびっくり。渋みはほぼ感じず、まるでお出汁のような旨味が口のなかに広がりました。
その後、二煎目、三煎目……と、徐々に温度を上げながら味の変化を楽しみます。だんだんと渋みが出て、普段飲んでいる緑茶の味に近づいていきました。
温度や時間によって味やカフェインの溶け出し方に違いが生じるため、味が変わるのだそうです。同じ茶葉なのにこんなにも違いが出るなんて不思議。

最終的には茶葉がここまで広がりました。最初の写真と見比べると一目瞭然です。そして最後にこちらの茶葉をそのままスプーンですくっていただきました。
旨味とほどよい渋みがバランスよく鼻に抜けておいしいです。柔らかいのに歯ごたえがある食感もくせになりそう。このままおひたしやお漬物にしたくなるような味です。
お抹茶づくり
お茶の奥深さを体感したあとは、いよいよ抹茶をひかせてもらいます。抹茶のもとになるのは、こちらの碾茶(てんちゃ)。

茶臼を使って碾茶を粉にしていきます。

ポイントは、速すぎず遅すぎずほどよいスピードで回すこと。速すぎると摩擦熱でお茶が変質してしまうそうです。

お茶をひくうちに、茶臼からスーッときれいな音がしてきます。涼やかで、とても耳に心地よい音色です。
むかしは茶会の最中に茶臼をまわし、ひきたての抹茶でお茶をたてることがあったそうで、茶臼の音色も贅沢な時間に欠かせないものだったのだとか。静かな空気に響く茶臼の音色を楽しみながらお茶をいただくなんて、なんとも風流です。
こちらの動画で、ぜひ音も聴いてみてください。
お抹茶がひけてくると、このように茶臼から粉になって出てきます。

こちらをサッと一度ふるったらお抹茶のできあがり。とても鮮やかな色で美しい。

自分だけのお抹茶アート
続いて、実際にお茶を点てていきます。お茶を点てるのが初めてでも、手順やコツをていねいに教えてもらえるので心配いりません。
さらに、濃いめのお抹茶を泡の上に乗せて、ラテアートのように好きな模様を描くこともできます。

いただいてみると、ほどよい苦さのなかに甘みと旨味を感じられてとても深みのある味わいでした。挽きたてのお抹茶を味わうなんて贅沢で貴重な体験です。
最後に
今回、宮野園さんでお茶摘み&お抹茶体験をさせてもらって、さまざまなお茶の魅力を再発見することができました。美味しさはもちろんのこと、摘みたてならではの香り、淹れ方による味の変化、お茶と過ごす風流な時間……。ほっと一息つきたいときのスイッチにも、誰かと過ごすときの架け橋にもなってくれます。日本人がずっとむかしから大切にしてきたお茶の文化は、とても尊いものです。
現代の生活では、急須でお茶を淹れることがなかなかありません。でも、今回の体験をきっかけに、これからリラックスしたいときにはていねいにお茶を淹れてみようと思ったのでした。

宮野園さんでは、毎年5〜10月の期間でお茶摘み体験を行っています。(お抹茶体験は通年)
ほかにも、お茶に関するさまざまな講座が開催されているとのこと。お茶の魅力を再発見したい方や、お茶を楽しみながらリフレッシュしたいという方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
■宮野園
埼玉県狭山市北入曽25-2
文:笹沼杏佳