
株式会社WHERE代表取締役社長・平林和樹さん
関係性を築き、地域と人に継続的なつながりを
文脈のある旅を通じて地域と人のつながりにイノベーションを起こすことをミッションに掲げ、日本各地の魅力的な地域・人・文化との出会いを提供する株式会社WHERE。代表取締役社長の平林和樹さんに、地域と人を結ぶ活動への想いについて伺いました。
3つの視点から地域の課題を解決する
──株式会社WHEREでは、どんな活動をされているのですか?
僕たちは、地域と人のつながりにイノベーションを起こすことを目指しています。そこで、地域の課題を3つの視点から解決しようと考えました。
ひとつめは、知ってもらうこと。どんなに良いところでも、「◯◯村ってどこ?」というように、その地域があまり知られていないという現実がありますよね。そこで、自治体のホームページをリニューアルしてスマホ対応にしたり、観光情報を増やしたり、より多くの人にまずは地域を知ってもらうことを目指しています。
2つめは、訪れてもらうこと。行きたいと思っていてもなかなか行けない場所って、結構ありますよね。そこで、僕たちがツアーやイベントを企画することで、実際に地域に訪れてもらえるような機会を提供しています。
3つめは、つながり続けてもらうこと。「毎年 1回は行きたい」とか、「いずれは移住したい」と思ってもらえるように、各地で空き家の再活用をして、気軽に訪れられるゲストハウスづくりなどをしています。地元の人とも触れ合えるような、コミュニティの拠点のような場所ですね。

関係性を築き、地域とつながり続ける
──ツアーでは、どんな体験ができるのでしょうか?
以前開催した奈良県東吉野村のツアーでは、東吉野村と東京で二拠点生活をしているフォトグラファーさんと一緒に、“フォトグラファーから見た奈良”というテーマのもと、地元の人しか知らないような絶景の秘境でキャンプをしました。そのフォトグラファーさんは、写真を撮るために絶景スポットをただ知っているだけではなく、地域の歴史や文化にも詳しく、現地の方ともしっかりと関係性をつくりあげている人。だからこそ、住人の方たちもとても協力的で、貴重な体験をたくさんさせてもらえるんです。ちなみにこのキャンプでは、地元のおじさんがボートに乗せてくれたり、近くの川でカニをとってきてふるまってくれたりしたんですよ。
旅行会社のツアーだと、観光も食事も参加者だけのことが多いかと思いますが、僕たちが提供するツアーでは、参加者よりも多いくらいの現地の人に参加してもらうなど、リアルな交流を大切にしています。そうすることで、参加者のみなさんが継続的に地域とつながることにも発展しやすいんです。ツアー後、僕たちの知らないところで「そういえば、あのとき来てくれた子、こっちに移住するかもしれないみたいだよ」と、いつのまにか話が進んでいることも。僕たちは、最初から“移住”という言葉はあまり打ち出していないのですが、関係を重ねることで、結果的に何人かが移住したり、ふるさと納税をするようになったり、それぞれの関わり方でつながり続けてもらえたらうれしいです。
それに、参加者のみなさんがとても良いリアクションをしてくれるんですよね。「薪割りしてるんですか!? やらせてください!」みたいな感じで、目をキラキラさせて。その反応を見ると、初めは「俺らの生活そんなに面白くないし、しゃべることなんてあるかな……」と言っていた現地の人も、「自分たちの日常がこんなによろこばれるんだ」って前向きな気持になってくれるんです。それ以降、「次いつくるの?」と、楽しみに待っていてくれています。「今度は何をしたらいいかな」と、ツアーの内容を考えておいてくれる人もいますね。
地域と人を結ぶ3つの拠点
──ゲストハウスなど、各地域の拠点についても教えてください!
現在僕たちは、地域と人をつなげるための3つの拠点を持っています。

まず、奈良県東吉野村ではゲストハウスづくりを進めています。この地域は民宿も少ないため、若い人が気軽に楽しく泊まれるような場所をつくろうということでプロジェクトが始まりました。もともと「オフィスキャンプ」という古民家をリノベーションしたシェアオフィスがあって、ここをゲストハウスにしていこう、という形で進めています。

長野県根羽村の拠点は、築130年ほどの大きなお屋敷を改装して、2階を民宿、1階をパン屋さんにしようと考えています。地域を訪れた人に宿泊施設を利用してもらいながら、地元の人たちにもパン屋さんに来てもらえるように。このあたりにはパン屋さんがなかったので、みなさんとても楽しみにしてくれているんです。

そしてもうひとつが、東京都墨田区の「てむすび」。ここでは、僕たちがつながっている日本全国の地域の食や文化を、純粋に楽しんでもらうためのイベントを定期的に開催しています。たくさん人が集まる東京だからこそ、まずは地域のことを知ってもらう入り口の場として、カジュアルに遊びにきてもらいたいですね。
心を豊かにするために、自分の世界を広げるための拠点をつくる
──もともと、平林さんはどうして地域と人をつなぐお仕事をしようと思ったのですか?
じつは僕、昔は“ザ・資本主義”みたいな性格の持ち主で、お金やステータスがすべてだと考えていたことがあったんです。目つきもいまとぜんぜん違って(笑)、大手IT企業でがむしゃらに働いていました。でも、あるとき「自分がやっていることは誰かを幸せにしているのだろうか?」と、疑問に思ってしまったんです。
それから24歳で会社を辞め、ワーキングホリデーで1年間カナダに滞在することに。僕は英語がまったくしゃべれなかったので、慣れないうちはうまくいかないことが多く、プライドもずたぼろ。一方で、滞在中は周りの人にすごく優しくしてもらえて、心が温かく、とても豊かになれました。ものやお金はもちろん大切だけど、ただ多く得ることが豊かさに直結するわけではない。使い方が重要なんだということを実感したんです。
そして帰国後、まずは地元を豊かにしようと、前職での経験も活かしながら長野県でITコンサルタントの仕事を開始。それから株式会社CRAZYでウエディング事業の業務改善やシステム化に携わったあと、本当に心を豊かにするためには“自分の世界を広げるための接点をつくること”が大切だと考え、株式会社WHEREを立ち上げました。
現在は地域のみなさんとの信頼関係も着実に深まっていて、一緒にお仕事をさせてもらう自治体さんも増えているところ。社員の採用にも力を入れていて、少しずつ会社の規模も大きくなっています。これからも、地域と人を結んで相乗効果を引き出しながら、各地の魅力を発信していけたらうれしいですね。

株式会社WHERE http://whereapp.io/index.html
文脈のある旅を通じて地域と人のつながりにイノベーションを起こすことをミッションに掲げ、日本に存在する魅力的な地域・人・文化との出会いを提供する。スタッフみずから各地域に暮らしながら地域とつながり、サービスを展開。観光だけではなく、その地域・文化に触れ、継続的なつながりを築く旅を提供している。
■Facebookページ https://www.facebook.com/whereinc/
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<取材・文/笹沼 杏佳>