
東京から人口500人の島へ
たくさんの出会いが結んだ、“豊か”な暮らしへの一歩 4/4
2017年春、東京から愛媛県の佐島へ移住する鈴木彩美さんと寺島由梨さん。佐島は、瀬戸内海に位置する人口500人ほどの小さな島です。彼女たちが移住を決めたきっかけや、二人の出会い、そして今後のビジョンとは? 第四回目の今回は、準備期間のエピソードや、お二人が目指す島での暮らしについて。
自然に人が集うような場所をつくりたい
由梨 :okappaを結成してからは役場への打診など、移住に向けた準備を本格的に始めました。2016年の12月に私一人で佐島へ行ってきたときは、借りる予定の古民家を見に行って、管理人さんにもご挨拶。建物の寸法を測らせてっもらったり、役所の方に会いにいったり、下準備を進めてきました。2017年の1月に、今度は彩美ちゃんがまた一人で行って。
彩美 :2017年の2月に初めて二人一緒に行ったときには、島の方たちが方言でしゃべってくれるようになったんです。「こっちに来るの、そろそろだね」みたいな感じでフランクに接してくれたのが、すごくうれしかった。
由梨 :たぶん「この子たちは本当に島に住むつもりなんだな」って信じてもらえたのかなって。
彩美 :きっと最初のうちは「本当に来るのかな」って気持ちをどうしても持ってしまうはず。でも、何度か島へ行くうちに少しずつ信頼関係ができていくようでほっとしました。滞在中は、私たち二人が出会うきっかけにもなった古民家ゲストハウス「汐見の家」に泊まって、ご近所さんたちと一緒にご飯を食べることもあったり……島の人と接する機会にも恵まれていたと思います。
由梨: 同じ日に泊まっていたほかのゲストさんとも、移住や島のことについていろんな話ができました。おかげで、考えも、人とのつながりも広がってきたんです。なかには、東京で再会した人もいるんですよ。移住後に使うクルマを探していたとき、「安く譲ってくださる方いませんか?」とFacebookで呼びかけたら、周りの知り合いにまで聞いてくれた方もいたりして。
彩美 :周りの人たちが良い情報をくれたり、すごく応援してくれて、とてもうれしく思っています。

ノートには打ち合わせの内容やリサーチした情報がびっしりとメモされている
由梨 :移住後は、古民家を改修しながら暮らしていく予定。私は設計の仕事に携わっていたとはいえ、担当していたのは図面を描くこと。実際に工具を持って手を動かした経験は、ほとんどありませんでした。でも、これからはどんどん自分でできるようになりたいと思っています。ありがたいことに、向こうで「教えてあげるよ」って言ってくださる方がいたので、早く上達したいですね。建物は結構すきま風も入るし、「女の子なのに大丈夫?」って心配してくれる人もいるけれど、私たちはこの古民家が好き。自分たちの手で直しながら暮らしをつくっていくのも、島に行きたい理由のひとつだから。改修する作業も通じて、いろんなことを教わりながら、島の人たちと仲よくなれたらいいなって思ったりもしています。
彩美 :二人で佐島をおとずれたときに、借りる予定の古民家の縁側に座ってみたんです。その空間がとても心地よくて、ここで暮らせることにとても魅力を感じたんだよね。
由梨 :うん、そうだね。
彩美 :島では、いつかお店を開きたいと思っているんです。
由梨 :自然と人が集って会話が生まれるような、そんな場所にしたいなって。
彩美 :移住する私たちだからこそ、島の人と旅人が自然につながれるような場所を作っていきたい。いずれは、島におとずれる人たちに佐島での暮らしや魅力を伝えられる存在になれればと思っています。島で暮らしている人たちにとっても、旅でおとずれる人たちにとっても、心地の良い場所になったらいいな。
※取材は2017年3月に行われました
okappa
2017年春に愛媛県の佐島に移住する二人組。メンバーは鈴木彩美さん(短めのおかっぱ)と寺島由梨さん(長めのおかっぱ)。
https://www.facebook.com/okappa.sashima/
写真・文:笹沼 杏佳