
東京から人口500人の島へ
たくさんの出会いが結んだ、“豊か”な暮らしへの一歩 2/4
2017年春、東京から愛媛県の佐島へ移住する鈴木彩美さん(右)と寺島由梨さん(左)。佐島は、瀬戸内海に位置する人口500人ほどの小さな島です。彼女たちが移住を決めたきっかけや、二人の出会い、そして今後のビジョンとは? 第二回目の今回は、寺島さんが佐島に住むことを決めたときのエピソードについてお伝えします。
自分たちの力で“暮らし”を作りたい
長野県の大学に通っていた私は、そこでの4年間の暮らしが大好きでした。東京の会社に就職してからも、2ヵ月に1回のペースで遊びにいくほど。高校生までアスファルトが広がる名古屋の街で育ったから、長野で見たむき出しの地面が新鮮で……将来も土が見える場所で暮らしたいと思ったんです。だから「いずれ自分は長野に住むんだろうな」と、なんとなくイメージしていました。
もともと“暮らし”に興味があった私は、家をつくることに関わりたいと思っていたんです。でもまだ、どんな家をつくりたいのかまでは思い描けていなかった。だから、まずはいろいろな形の“暮らし”を生み出す現場を見てみたくて、ゼネコン業界に就職。設計の仕事に就きました。4年ほど働いて、そろそろ次のステップを考えてみてもいいかなと思っていたとき、あるご夫婦に聞いたお話がすごく響いたんです。
東京から千葉の古民家に移り住んだそのご夫婦は「この家に帰ると生きている実感が得られて、心身ともに健康になるんだよ」と話してくださったんです。家には、人間としての本来の感覚を呼び起こす力があるんだと実感。それで私も、暮らす人が元気になるような家を提供したいと思えました。次のステップとして、個人住宅を手がけている設計事務所を探し始めたころ。友人の紹介で、佐島の古民家ゲストハウス『汐見の家』のオーナーさんに出会いました。

当時はまだ、『汐見の家』ができる前。オーナーさんが近所に住んでいたのもあって、「ゲストハウスをつくろうとしている面白い人がいる」と、共通の知人が紹介してくれたんです。そこで初めて佐島を知りました。その後、オーナーさんとの出会いをきっかけに、2016年の2月に佐島をおとずれます。当時は自分が住むなんて思っていなかったんですよ。でも、2016年の9月に東京でふたたびオーナーさんに会うと、「空き家が2軒くらいあるんだけど、由梨ちゃん改修やってみない?」って、声をかけてくれたんです。すぐに「やりたい! これは行くしかない!」と思いました。
勤めていた会社は次の春で辞めて、佐島へ行くことに。“住”に限らず“衣”“食”も、暮らし全般が好きなので、畑や海がある環境もとても魅力的に感じました。自分で生きていく力をつけられると思うと、わくわくするんです。それまでは、どんな暮らしを生み出したいのか、はっきりとイメージできていなかった部分もありました。でも、ずっと考えて、探し続けていた結果、佐島に出会えた。いまは、探しものが見つかったような気持ちでスッキリしています。
※取材は2017年3月に行われました
okappa
2017年春に愛媛県の佐島に移住する二人組。メンバーは鈴木彩美さん(短めのおかっぱ)と寺島由梨さん(長めのおかっぱ)。
https://www.facebook.com/okappa.sashima/
写真・文:笹沼 杏佳